学生によるフォーラム「From TOKYO2020 ~学生がつなぐ未来へのバトン~」が10月8日、上智大学四谷キャンパスで開催されました。
本フォーラムは、東京2020大会における学生の経験や活動を通じた意識の変化を伝え、「オリンピック・パラリンピックに対して学生が自分事化して関わること」の価値を広く認識してもらう機会とすることを目的に、オリンピック・パラリンピックにかかわる団体に所属する学生の運営により開催されました。
はじめに、鮎澤誠二実行委員長が各大学の団体が実施した活動について紹介するとともに、東京2020大会に関連する活動を通して自分と異なる特徴・考え方を持つ人を理解するようになるなど、自分自身が大きく変わるきっかけになったと説明。また、自分以外の多くの学生にも多様な変化が見られたことから「オリンピック・パラリンピックに対して学生が自分事として関わることで、オリンピック・パラリンピックの本来の開催目的である“より良い社会づくり”というものに大変貢献できるのではないか。活動を経験できた私たちだから発信できるメッセージを、未来の社会へ向けて発信していきたいと思います」と、本フォーラムの開催経緯やねらいを話しました。
■トークセッション(1)『誰もが関われる。変われる』
次に『誰もが関われる。変われる』をテーマに1つ目のトークセッションが行われ、岸本マリアさん(津田塾大学梅五輪プロジェクト)、近藤満里菜さん(元KEIO 2020 project)、鳴島沙紀さん(上智大学Go Beyond)、杉本昴熙さん(学生団体おりがみ)が登壇。ファシリテーターを中村真博さん(立教大学大学院)が務め、活動を通じて学生はどう変わったのか、何を考えたのかについて、それぞれの意見を交換しました。
「積極的に多様なコミュニティや活動に参加していくことによって、自分の可能性を広げられる第一歩を踏み出すことができた。そして、その第一歩を踏み出すことの大切さを実感する経験となりました」と語ったのは、VR(仮想現実)技術を駆使してキャンパスから日本文化を発信する活動に携わった岸本さん。一方、大会の1年延期によって学生として大会本番に関わることができなかったという近藤さんは「一つのイベントに向かって準備するのはどのお仕事でもあります。そこに向けて誰が何をすればいいのか役割を伝え、体制として見えるようにすることなど、準備の方法はオリパラに関係なくても役に立ったことだと思います」と、社会人となった後も学生時代の経験が大きな助けになっていると報告しました。
また、東京2020大会で経験した活動を今後の人生にどうつなげていくかについて、パラスポーツを通じて共生社会を目指す活動に取り組んだ鳴島さんは「オリパラがあったその時だけではなく、もっと継続的にみんなの意識の中にパラスポーツ、共生社会というワードが根付いてほしい。私自身も自分のできる範囲から共生社会につながる活動をしていければ」と述べ、学生団体おりがみとしてボランティア活動に携わった杉本さんは「相手のためだけではなく自分のためにもなるボランティアというものを、多くの人が東京2020大会を通して経験したと思う。もっとそれが当たり前になればと思っているし、自分のためにもやっていいボランティアというものを研究し、ボランティア自体の魅力を広めていきたい」と、これからの目標を話しました。
これら学生たちの意見をうけて、ファシリテーターの中村さんは東京2020大会のビジョン『スポーツには世界と未来を変える力がある。』を挙げ、「社会がどう変わったかが分かるのは、これから時間が経った中でレガシーとして表れてくると思います。ただ、学生たちが語ったような一人ひとりの小さな変化がこれからの社会を作っていくものだと思いますので、この小さな変化を今後も追っていく必要があるのかなと思います」とまとめました。
■トークセッション(2)『学生自らが取り組んだからこそ』
続いて、2つ目のトークセッション『学生自らが取り組んだからこそ』が行われ、大原ひなたさん(早稲田大学VIVASEDA)、日比麻記子さん(MGオリンピック・パラリンピックプロジェクト実行委員会)、都築則彦さん(学生団体おりがみ)、加藤愛梨紗さん(上智大学Go Beyond)が登壇。加藤さんがファシリテーターを兼任し、社会・自身の意識の変化、未来・次世代への意志などについて議論しました。
それぞれの活動を振り返っていく中で、加藤さんは「学生が主体となることで多様性を知り、視野が広がる機会になる。私自身、オリパラを通して多くの人と出会って協働することで共生社会を実感し、考えるようになった。こうして主体的に行動することに大会の意義を感じました」と、経験から得た価値を紹介しました。
しかしながら、その一方で学生たちから課題として挙げられたのが、団体同士の横のつながりが薄かった、大会後の活動の継続性がなく大会ごとにゼロベースになってしまう、また機運醸成にあたっての学生間の熱量の差や情報発信の方法など。これらの解決方法として「学生主体の活動に他の若者をもっと巻き込む」「若者の取り組みを冊子、ウェブサイトにまとめてオフィシャルとして発信する」「今は共創の時代。トップだけで何かをつくるのではなく、オリパラの競技とは違った形での参加、自分も関わっていけるという裾野の多様性を作る」「次世代を担う人がオリパラを通した経験をしないと継承は生まれない。若い人、学生が関わるからこそ未来への継承が実現し、社会に還元できると思う」など、様々な意見が出されました。
また、これらの意見交換を経て、「北海道・札幌2030大会が実現したら、どのような大会にしたいか」について、登壇した学生は次のように述べました。
「私自身、またボランティアをしたいと思っています。また、北海道・札幌2030大会に期待することとしては、大学生だけではなく中学生・高校生も関われる大会になればと思う。将来を考える上で貴重な機会になると思うので、学生に対して間口が広がっている大会になればと期待しています」(大原さん)
「私も学生に広がっていく大会になり、札幌の子たちも盛り上がってほしいと思う。また、東京、札幌に限らずオリパラはずっと続いていくから、そこにどんどんみんなが参画して行動を起こすことが絶え間なく続いてほしい。大会に目を向けるきっかけづくりはずっとあってほしいなと思います」(加藤さん)
「オリンピック・パラリンピックは開催するまでに莫大な費用がかかり、多くの人が労力をかけているのに、大会をやって終わりというのは物凄くもったいない。そうしたムーブメントがゼロベースになってしまう前にどうにか維持をして、札幌大会に生かしていくというのがまず大事なことだと思っています。私はできれば札幌大会の組織委員会として関わり、地域創生、共生社会に還元したいと思っています。そして、より多くの人がオリパラを通して経験を得て、それをさらに持ち上げていくきっかけになるような大会にできたらいいなと思います」(日比さん)
「オリパラに関して様々な矛盾が起きたと言われていますが、その矛盾はもともと日本社会に根付いていたものではないか。今、東京2020大会組織委員会理事による収賄の問題がありますが、それでオリンピック・パラリンピックが全部悪かったとするのでは大会を開催した意味がなくなってしまう。どこに問題があって、どこが良かったのかをちゃんと議論して、どんな札幌大会だったら招致したいかを考えたり、話したりすることができればと思います。賛成派、反対派が分断されて多数決で決めるのではなく、相互作用的に意見が行き来できるような透明性を持った招致ができれば」(都築さん)
トークセッションの後には会場の参加者、オンラインでの視聴者からもオリンピック・パラリンピックに関する学生の活動について様々な意見、質問が寄せられ、未来へ向けた活発なディスカッションの場となりました。
最後に鮎澤実行委員長が登壇し、本フォーラムの感想を述べるともに、「自分たちが目指したいのは、より良い社会、誰もが生きやすい社会。それを達成していくためにもオリンピック・パラリンピックがより価値あるものになるべきで、そのために学生たちが関わってほしいと思っています」と総括。そして、今後取り組んでいきたい活動として「東京2020大会における学生の取り組みを包括的にまとめた報告書の作成」「ロサンゼルスやパリに今回のイベントを英訳して届ける」「札幌2030大会での学生の取り組みに関する協議・取り組み推進」の3つを挙げて、本フォーラムを締めくくりました。
■自国開催に向けたメッセージ
イベント終了後は、東京2020大会で自国でのオリンピック・パラリンピックを身近に経験された参加者の皆さんに『もしも北海道・札幌で2030オリンピックが開催されたら』をテーマにメッセージやコメンントをいただきました。