9月8日(木)、札幌市内で第4回北海道・札幌2030プロモーション委員会が開催され、会場とオンライン合わせて26名の委員が出席しました。今回のテーマは「SDGs」「経済・まちづくり」です。


©アフロ


議題に入る前に、日本オリンピック委員会(JOC)会長である山下泰裕会長代行が、JOCと札幌市との連名でこの日に発表した「北海道・札幌2030オリンピック・パラリンピック冬季競技大会に向けて」と題した宣誓文について説明。東京2020大会組織委員会の元理事が受託収賄容疑で逮捕された事案は札幌2030冬季大会の招致活動とは直接関係はないものの、山下会長代行は大会の組織及び運営面における今後の方針を示し「今後、招致が成功し開催が決定した際には、より具体的な対応策を関係機関も巻き込んで議論し、クリーンな札幌大会を目指してしっかりと発信していきたい」と述べました。札幌市長である秋元会長代行も「招致の段階から組織委員会設立後の運営などについて透明性、公平性を確保し、いかに国民の信頼を得ていくかについて、JOCとともに検討を進めていきたい」と説明しました。


また、スポーツ庁長官である室伏広治顧問はこの説明を受けて「JOC、札幌市の取り組みを踏まえつつ、連携・協力を図ってまいりたい」とコメント。橋本聖子特別顧問も「東京2020大会組織委員会の元会長という立場から、この問題に対して心からお詫びを申し上げます」と述べると、「東京2020大会の良かったこと、課題をしっかりと継承し、札幌2030冬季大会がこれからの日本、そしてまた北海道の未来において何を発信することができるのかということを今一度考えていただいて、しっかりとしたものを作り上げていきたいと思っております」と決意を語りました。


 

基調発言を行った井本直歩子委員(オンライン参加)

©︎アフロ


次に、大会概要(案)と今回のテーマである「SDGs」「経済・まちづくり」との関連、並びに大会開催による経済効果について事務局より説明があった後、井本直歩子委員が「気候アクションのためのスポーツ」と題した基調発言を行いました。


井本委員はまず、スポーツ界でも温暖化の影響は大きく、温室効果ガスの排出量がこのまま維持されると、これまでに冬季オリンピック・パラリンピックを開催した都市の中で2080年に開催可能な都市は札幌のみになると発表された研究データなどを紹介。冬季大会やウインタースポーツ存続の危機に警鐘を鳴らす一方で、スポーツ界の脱炭素化に向けた世界の動向として、国際機関であるUNFCCC(国連気候変動枠組条約)の「Sports for Climate Action」、IOCのサステナビリティ戦略などを説明。さらに国内での画期的なケースとして、2019年に長野県白馬村で設立された民間のNGO組織であるProtect Our Winter Japan(POW Japan)の啓発活動により、市民、スキー場、企業が力を合わせて行政を動かし、全国の自治体では3番目となる気候非常事態宣言を白馬村が表明するなど、スポーツをベースにしている産業や市民社会から大きなムーブメントが沸き起こった事例を紹介しました。


これらを踏まえ、北海道・札幌2030冬季大会の招致・開催に向けてできることとして井本委員は『まちづくり』『スポーツ界』『大会本番』の3つの枠組みからできる活動を提案し、「北海道・札幌2030冬季大会が北海道、日本全体を巻き込んで気候変動対策を前に進めるような大会になれば」と締めくくりました。



芦立訓委員 ©︎アフロ


続いて、日本スポーツ振興センターが8月に発行した「スポーツを通じたSDGsマネジメント手法に関するガイドブック」について、芦立訓委員が紹介しました。SDGsの17の目標に関して、当ガイドブックではそれぞれのテーマごとにチェックリスト、チャートを記載。これらを活用することで、大会そのものが国連、WHO、スポーツ大臣会合で挙げられている課題をクリアしているかを説明していくことができることから、「世界的に札幌大会がSDGsをクリアした、しっかりとした大会になるという説明が非常に容易になり、グローバルな視点で大会の計画がうまく進んでいるとお示しできると思います」と提案しました。


次に、井本委員の基調発言、ガイドブックの説明を受けての意見交換が行われ、各委員からは今回のテーマである「SDGs」「経済・まちづくり」についての意見が述べられました。


「ヨーロッパのスキー場も5年、10年で大きく様変わりしたのを目の当たりにしてきた。北海道・札幌2030冬季大会をきっかけにしっかりと札幌、北海道からゼロカーボン社会を作ることができればすごく嬉しい。改めてこの課題については積極的にやっていきたいし、より具体的な案を検討していきたい」


「我々の役割は次の世代に何を残していくか。それを考えた時に、スポーツに関わる多くの方々、やる人だけではなく、見る人、支える人も含めてスポーツ界が気候変動、環境破壊の問題に対して行動を起こしていくことが大切。いろいろな関係団体がそういう意識を持って多くの人を巻き込み、そして2030年の北海道・札幌大会の開催が決まった時には覚悟を持って取り組んでいく姿勢を示すことが必要ではないか」


「オリンピックの招致、開催までのプロセスの中で環境変動に対する取り組みをしていくことができれば、世界の中での日本、北海道、札幌の今の意識、現在地の理解を通じて環境をどう変えていくのかというプロセス・プログラムを組むことができる。それ自体が、札幌市内の人たちがこのオリンピック・パラリンピックを通じて自分事として何をしていくのかということに繋がっていくのだなと感じた」 


「今回のテーマを含めてこれまで私たちが議論してきたものは、すべて社会の課題に対する解決策の議論だが、多くの方々がそこに自分の意思をもって参加することが一番効果的。私たちが目指す2030年までの期間で、もしこうした社会解決のテーマの中にスポーツの軸をおきながら時間を使うことができれば、これは素晴らしい8年間になる可能性がある。この問題を北海道、札幌が先行して取り組んでいくことができれば、本当にスポーツの価値というものを改めて感じることができると改めて感じた」



 

スローガンワーキンググループについて説明する木村麻子委員

©︎アフロ


次に事務局より、機運醸成活動およびメッセージ・スローガンの策定についての説明が行われました。機運醸成活動については、札幌市などで行われた各種イベント等でのPR、都市装飾、若い世代を対象にしたワークショップの開催、プロモーション委員による体験型出前授業および特別授業の実施などを報告。メッセージ・スローガンの策定については、大学生など外部メンバーも参画して若い世代の声も反映できる少人数のワーキンググループの設置、インターネット投票の実施、策定スケジュール、次回のプロモーション委員会で最終案と選定経緯を報告することなどが説明されました。

 

©︎アフロ


次回の会議は10月27日(木)に開催予定です。



<More Information>

> プロモーション委員会開催詳細


> 北海道・札幌2 0 3 0 ニュースレター| 第3号

 News Lettter #3 「SDGs」「経済・まちづくり」をテーマに議論(PDF:2,706KB)