北海道・札幌2030オリンピック・パラリンピックプロモーション委員でもある日本パラリンピック委員会(JPC)の河合純一委員長が、9月7日に北海道札幌市の澄川南小学校で、翌8日に北海道札幌視覚支援学校で特別講演を行いました。
澄川南小学校の小学3年生、5年生の児童を対象にした7日の特別授業では、「夢 追いかけて」をテーマに、夢を持ち続けて歩んできたこれまでの人生を紹介しました。15歳のときに失明しながらも、小学校4年生のころから思い描き続けてきた「学校の先生になる」という夢をあきらめず、また、17歳で初めて出場したバルセロナパラリンピックで金メダルをとれなかった悔しさから「パラリンピックで金メダルをとる」という新たな夢ができたと振り返った河合委員長。そのような自身の経験から、「僕は失明して光を失っても、夢は見失わなかった。夢を持ったら、そのイメージを描き続け、どうすれば叶えられるだろうかという気持ちになってください」とアドバイスを送りました。
そして、夢を実現させるためのヒントとして、今から目指すゴールがどこで、今の自分はどの地点にいるのかを確認するために「自分らしさ」を書き出すこと、20歳までに自分がやりたいことを20個書き出す「ウィッシュリスト」を作ることを提案。「自分らしさやこれからやってみたいことを書き出し、自分が気づけていなかった自分に気づけることで、また新たな可能性に出会えるのではないかなと思います。皆さんには無限の可能性があります。そして、叶えたいと思う力が強い人ほど多くのエネルギーが集まってきます」と、夢を持ち続けることの大切さを児童たちに伝えました。
続いて、東京2020大会、北京2022冬季大会に出場したパラリンピック日本代表選手の活躍を交えながら、国際パラリンピック委員会公認教材『I’mPOSSIBLE(アイムポッシブル)』の内容を紹介。その中でも触れられているパラリンピックの4つの価値(強い意志、勇気、インスピレーション、公平)の中でも、特にパラリンピックを通じて「公平」を伝えたいと述べた河合委員長は「いろいろな工夫をすれば、誰もが同じスタートラインに立つことができる。できないから無理だとあきらめてしまうこともあるかもしれませんが、そうではないことに気づかせてくれる部分がこのパラリンピックにはたくさんあるのではないかと思います」と話し、パラリンピック競技での実例を踏まえて、“できないことをできるようにする工夫”についての重要性を説明しました。
そうした工夫を少しずつでもしていけば、これからの学校生活や行事、クラスはもっと楽しくなり、それは広い社会に当てはめれば、東京2020大会や北京2022冬季大会、そして招致を目指している北海道・札幌2030冬季大会を通じて「誰もが自分らしくいられる共生社会につながっていく」と河合委員長。この目指す共生社会について「お互いの個性・良さをつぶし合って混ざり合うようなミックスジュース型ではなく、お互いの良さを生かし合えるフルーツポンチ型の社会、学校、クラスを作っていけるといいのではないかなと思います」と例を挙げ、最後に「共生社会について、ぜひパラリンピックを通じて何かを感じてもらえたらうれしいです。そして、良い友達・仲間をつくって夢を実現してほしい」と、児童たちに呼びかけました。
翌8日の北海道札幌視覚支援学校での特別講演では、函館、帯広、旭川の支援学校ともオンラインでつなぎ、ここでも夢を持ち続けることの大切さを生徒たちに伝えました。視力を失いながらも「学校の先生になる」「パラリンピックで金メダルをとる」という2つの夢を叶えた自身の半生から、「難しいことだからあきらめるのではなく、どうしたらできるんだろうと考えて取り組むことが大事だと思います」と河合委員長。全盲となったこと、それにより地元を離れて東京の支援学校に通うことになったことに当時はショックを受けながらも、「その学校に行ったからパラリンピックにも出られました。また、様々な競技を通じて他の障がいのある方と触れ合うことで色々な考えにも出会えました」と、夢を持ち続けて一歩踏み出す勇気、覚悟、決意があったからこそ今につながっていると振り返りました。そして、「住みやすい社会をつくるためにスポーツやパラリンピックを通して、皆さんと一緒に考え、頑張っていくことが今の僕の夢です」と明かしました。
また、視覚障がいの先輩として伝えたい、“夢を叶えるために大切なこと”のもう一つのキーワードとして挙げたのが「仲間」の存在。河合委員長は「自分も夢、目標を叶えるのはすごく難しくて、簡単に学校の先生になれたわけではなかったですが、その時に応援してくれる人がいて、すごくありがたかった。自分が一生懸命、何かに取り組んでいると、周りも自然と応援してサポートしてくれる。こうして声をかけてくれる仲間、友だちがいることで、きっと皆さんも前に進むことができると思います」と、自身の経験を交えながら仲間の大切さを伝え、さらに自分の夢が叶ったときには仲間たちの存在が喜びを2倍、3倍にも広げてくれると述べました。
最後に河合委員長は「ぜひ、みなさんが夢や目標を見つけて、それを叶えたよ、あるいは近づいたよと教えてくれたらうれしいです」と呼びかけ、講演後は生徒たちと質疑応答を通じて交流を深めました。