7月26日(火)、札幌市内で第3回北海道・札幌2030オリンピック・パラリンピックプロモーション委員会が開催され、会場とオンライン合わせて29名の委員が出席しました。今回のテーマは「レガシー」 です。


はじめに事務局より、1972年札幌オリンピック、2017冬季アジ ア札幌大会、2017IPCノルディックスキーW杯札幌大会、東京2020大会のレガシーと、北海道・札幌2030大会概要案で掲げるレガシーの一例に関する説明が行われました。


続いて、「将来のオリンピック・パラリンピックに向けてFrom Tokyo to Sapporo」と題し、元東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会ゲームズ・デリバリー・オフィサーの中村英 正さんが基調発言を行いました。


「オリンピック・パラリンピックの変わらぬコアは、スポーツであり、アスリートであり、平和の祭典」と冒頭で強調した中村さん。この価値を継続させるためには、東京における1964年大会から2020年大会までの社会の移り変わりがそうであったように、時代の変化に合わせることが重要であり、特にこれからのオリンピック・パラリンピックにおいて求められることは「簡素化・軽量化」「多様性」「参画」であると述べました。


まず「簡素化・軽量化」について中村さんは、持続可能な大会という観点から開催する都市のありのままの状態を活かす発想が大事であると指摘。一方で、各国際競技連盟(IF)からの施設に関するリクエストに対応する必要はあるものの、「様々な競技が一カ所に集まって行うという大会の特性からして、そこは最大限融通を利かせてもらって、できるだけ現場の施設を変えない形でやることが、コスト面だけではなく、持続可能な大会という意味でも非常に大きい」と述べました。そのために、大会ごとにIOC、IPC、開催都市、各IFを交えてサステナブルな大会をすると合意を取り、各所がWin-Winなシチュエーションをつくることができれば、IFのリクエストを通すことが競技連盟全体の評判に関わってくることになり、「必ずサステナビリティを重視していく方針に変えてくれると思っています」と、東京2020大会におけるオリンピック・アジェンダ2020を例に挙げて説明しました。


元東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会ゲームズ・デリバリー・オフィサーの中村英正氏(オンライン出席)


続けて「多様性」について、価値観が多様化した現代社会においてオリンピック・パラリンピックに対しても賛否を含めて様々な意見が出てくることから、「なぜ大会に賛成・反対するのかを互いにコミュニケートして対応することが大事。東京大会でも多様な意見、厳しい意見があったからこそ様々な良い取り組みができた。札幌でも支持率の数字だけに着目するのではなく、その下にある価値観をど う共有化して、共通点を見つけていくのかが大事なポイント」と中村さん。また、「多様性」に加えて「参画」にも関わる成功例として挙げたのが、小学生による東京2020大会マスコット選定。「当時12 歳だった子供は来年18歳。オリパラの準備期間にコミットして、そして見ていただくことで多様な価値観を持った子供たちがこの日本、そして東京に数多く育つ。その子供たちが社会の中核になっていくということを考えると、オリパラを通じて多様な社会が構築されていくということが言えると思います」と、子供たちによる「参画」の成果を述べました。

そして、最後に中村さんは「オリンピック・パラリンピックはスポーツの祭典ではありますが、オリンピック・パラリンピックが変わることで社会に新たな姿を見せるというところがもうひとつの大きな側面。東京2020大会を通じて社会の縮図として様々な問題点が出まが、そうした部分も含めて『スポーツには世界と未来を変える力がある。』ということを念頭において、大会招致に向けた取り組みを進めていくことが大事だと思います」とまとめました。



続いて、「私たちがほしい世界」とスポーツ:学生による東京2020大会持続可能性評価」と題し、慶應義塾大学蟹江研究室の佐々木剛二SFC研究所上席所員、 環境情報学部4年の早川さくらさん、蛇谷幸紀さんが基調発言を行いました。


左から佐々木剛二SFC研究所上席所員、環境情報学部4年の蛇谷幸紀さん


同研究室では2015年からオリンピック・パラリンピックの開催によって生じる有形・無形の影響について理解を深め、その経過と進化を客観的な方法論に基づいて追跡するために「大会影響 (Olympic Games Impact, OGI)調査」を行っていましたが、 2017年にこの調査が中止となったため、その後はOGI調査をもとに学生主体で独自に持続可能性評価に関する調査分析を進めていました。この活動から得られた重要なインサイトとして、佐々木氏は東京2020大会招致が決定した2013年から大会が開催された2021年の間パラダイムシフトが起こったと指摘。「2013年当時はサステナビリティは大会の一部と捉えられていたものが、2021年にはサステナビリティは世界全体で取り組むものとしてその重要性が認識され、スポーツを通じて、SDGsの実現、環境・社会の向上、市民のウェルビーイングなどをどのように盛り上げていけばいいのかということにフォーカスが移ってきたのではないか」と説明しました。



一方、大会持続可能性評価のプロセスに関して、実際に「水質」カテゴリーを担当した蛇谷さんは、東京・お台場海浜公園、千葉・釣ヶ崎海岸での調査分析から「大会の施策は一時的・限定的なものにとどまっており、レガシーにつながっていないのでは。環境対策の見せかけや、 大会開催時のためだけの解決ではなく、持続的な環境改善の仕組みを作ってほしい」と報告。 また、基調発言のテーマともなった「「私たちがほしい世界」とスポーツ」について早川さんは、自らの経験から得た目に見えない偏見・差別、LGBTQを含むジェンダーの意識改革の問題を挙げるとともに、SDGsの観点からスポーツや大会に望むこととして「私たちは市民が自らの使命を見つけ、挑戦する力を大切にしたいです。アスリー トのスポーツへの挑戦はそうした一人ひとりの挑戦をエンパワーできるはずです。スポーツを通じてサステナビリティとの出会いが生まれ、多くの人にとっての原点となれば良いと思います」とまとめました。


太田雄貴委員


次に基調発言を受けての意見交換が行われ、各委員からは札幌2030大会招致によって生まれるレガシーや持続可能性について、また若い世代に対する期待の意見などが述べられました。


「札幌2030大会に期待していることは、街が誰でも住みやすい環境に変わること、障がいのある人など多様な人に対する理解が深まって心のバリアフリーが進むこと。これからは環境と人の意識の向上が大きなレガシーにつながっていくと感じている」


「若者や子どもたちが考えて実行したことそのものがレガシーとなり、これからの日本、札幌市、北海道をより良くしていく大きな力になる。市民、道民の皆さんにも主体性を持っていただくような働きかけが大切」


「アスリートだけではなくて、北海道・札幌という街はチャレンジする人たちをいつだって応援するというカルチャーが根付いていくことがレガシーとしてとても大切」


「大会中だけ注力し、終わったらまた元に戻ってしまうことが往々にしてある。そのときだけではなく、今からできることをしっかり作っていくということがレガシーになるのではないか」


「Z世代がどのように考えてオリンピック・パラリンピックが運営されていくのかというものも非常に注目されるべきこと。今までやってきたものの良さもあるが、もっと具体的な運営を若者に任せて、そこで経験させていくといったシフトチェンジを新しい取り組みとして行ってはどうか」


「誰も取り残されないということが大事。ありのままの自分たちが認められてここにいる、誰もが自分の可能性に挑戦できるような居心地のいい環境づくりをしていくこと、その歩みを止めないということがレガシーづくりとしとても大切なこと」


「2030年に向けて大切なレガシーとして作っていかなければいけないのは気候変動への対応。かなりの力を入れて気候変動の問題をレガシーとして一番前ぐらいに持っていかなければいけないと思う」


「難しい言葉ではなくて、オリンピック・パラリンピックを使って自分たちがより住みやすい街・国にしたいという話し合いができれば」


「8年後に何が起きる、その先のために何をするのかという未来に向かった考え方、未来志向で今提示しなければいけない。札幌の未来をどのように変えていくのか、8年後はこうなっていくからさらにその先の10年、20年、30年がどうなっていくのかということを考えた上での目標設定をしていく必要がある」


「東京大会からの様々な提案、提言は、大変参考になった。今後の活動にしっかりと取り組んでいきたい。若い世代の方々に自分事として参画をしていただくということ。とりわけ若い方たちの関心が 非常に高いSDGsや環境問題については、具体的に若い人たちがプロジェクトとして参画できるような仕組みにも取り組んでいきたい」


「1カ月間の世界の動きというのはものすごく早い。勉強会ではなく我々はプロモーションしていくために何をすべきなのかというところの意思決定をする必要がある」


「大通公園で開会式や一部の競技の実施を検討してはどうか。札幌をアジア・オセアニア地域の最高峰のスノーリゾートとして位置付けて、世界中から多くの観光客を呼び込むという案はどうか」


牧野准子委員



次回の会議は「SDGs」「経済・まちづくり」をテーマに、9月8日(木)に開催予定です。