写真:フォート・キシモト/JOC 


北海道・札幌2030大会の招致スローガンが『世界が驚く、冬にしよう。』に決定しました。若者世代の代表として招致スローガン策定ワーキンググループに参加した毛利迅さん(札幌市まちづくり若者実行委員会委員)、鎌田優月さん(札幌市まちづくり若者実行委員会委員)、浅野柊さん(2030年冬季オリンピック・パラリンピック学生向けワークショップ参加者)にインタビュー。北海道・札幌2020大会プロモーション委員といっしょにスローガンを策定した過程や感想、言葉に込められた思い、そして、北海道・札幌2030大会への期待などを伺いしました。

 


■若者らしい、ちょっとありえないアイデアを

 

――本日はよろしくお願いいたします。まずは毛利さん、鎌田さんのお二人にいろいろとお話を聞いていきたいと思います。では、まずは簡単な自己紹介、これまでの活動内容から教えてください。

 

毛利 札幌市まちづくり若者実行委員会の毛利迅と申します。活動内容としましては、まちづくりに関係するイベントやワークショップなどを半年間、委員として参加していました。10月中旬に1回目のまちづくりに関するイベント、ワークショップを大学生や若手の社会人に向けて企画して開催しました。あと残り数回、3月までに開催する予定です。

 

鎌田 改めまして、札幌市まちづくり若者実行委員会の鎌田優月と申します。私も毛利さん同様、若者に対してまちづくりを広めるためのイベントの企画運営の活動を行っております。よろしくお願いします。

 

――お二人がまちづくりに興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか? もしくは、こういう思いがあってまちづくりに関心を持っているなど教えてください。

 

鎌田 幼少期のころから両親に連れられて町内会のイベントなどに積極的に参加するような家庭でした。そうしたこともあって、高校の時にもボランティア部のようなものに入って積極的に活動して、大学でもボランティアサークルに入ってと、まちづくりに関心を持つような環境で育ってきました。ですので、関心を持つきっかけというとあまり覚えていないのですけど(笑)、結局、まちづくり活動はやっていて楽しいと私が一番に思うことです。活動自体が本当に楽しいと思っていますし、それをきっかけに人と触れ合うとか、コミュニケーションをとるということが私はすごく好きですね。ただ、なかなか周りの大学の友だちとかでまちづくり活動をしている人は少ないですし、これから若者がまちづくりとか町内会活動に関心を向けられるようにというのは今後の課題になってくるのかなと思います。

 

毛利 僕は鎌田さんと全くの逆で、今ですらまちづくりとは何なのかと、もはや分かっていないような状態ですし、それこそ小さいころから興味があってということではなかったですね。僕のバックボーン的なことを言いますと、12年間サッカーをやってきたゴリゴリのスポーツ男子だったので、そもそもまちと関わるきっかけは高校卒業までは何もなく、まちづくりの一文字目も分からないような人でした。ただ、大学に入っていろいろな活動をするようになったのですが、その中でまちづくりに興味を持ったというよりは、自分のやっていることがもうまちづくりなのではないか、と。まちづくりってなんだろう?ではなく、自分のこの活動がもう“まちづくってんだぜ”みたいなテンションでやっていることなので、今回札幌市まちづくり若者実行委員会に入ったのもまちづくりに興味があるから入ったのではなくて、自分の表現したいこと・やりたいことをそこにぶつけられることがまちづくり、人が集まって何かをやること自体がまちづくりという考え方です。だから、興味をもったというよりは、自分の表現したい活動がまちづくりになればいいんじゃないのかなと考えています(笑)。

 

――お二人それぞれのまちづくりに対する背景、考え方ひとつをとっても多様性というものが伝わってきますね。今回の招致スローガンワーキンググループも少人数でも、オリンピック・パラリンピックのメダリスト、経済界、教育界の専門家など様々な年代、立場の方が一緒になってチームを組みました。そのようなグループに参加して活動した率直な感想を教えてください。

 

毛利 はい、率直な感想としては“しびれた”という一言ですね。皆さんの経歴については深くは知らなかったのですが、何をしているのかをお伺いした時に「こんなことをしている人なのか!」とか、実際にオリンピアン、パラリンピアンとして活躍された選手たちだったので驚きました。これまでも大人の方たちとの関わりはありましたが、そのような人たちと一緒にプロジェクトを進めるということ自体がまずはかなりしびれたというのが一つ、ありましたね。その中でもすごく雰囲気よくできたのが、僕の中ではすごく良かったです。

 

鎌田 私は毛利さん同様にひと言で言うと、“感謝”ですね。と言うのも、私はそもそもあまりスポーツやオリンピック・パラリンピックに関心の薄い若者でした。そうした一学生でも自由に意見しやすい空気を皆さんが作ってくださったことにまず感謝しています。それと、そうそうたる素敵なメンバーの皆さんとともに意見を出し合って、一生懸命招致スローガンを考えた経験は本当に貴重なものだと思いますし、若い年齢で関わることができたということは私自身本当に勉強になることばかりで、感謝の気持ちでいっぱいだなと思っています。

 

――鎌田さんのようにオリンピック・パラリンピックにあまり関心がなかった方も参加して招致スローガンを作成したというのは、多様性という面からもすごく重要な過程だったと思います。では、なぜお二人はワーキンググループに参加しようと思ったのでしょうか?

 

毛利 僕は札幌市まちづくり若者実行委員会の事務局の方から「こういうプロジェクトがあるんですけど、どうですか?」と誘われたことがきっかけです。僕はずっとスポーツをやっていましたし、なかなかこのような経験はできないからやってみようかなというのが理由です。

 

鎌田 私も事務局の方からお話をいただきました。初めに聞いた時は、スポーツに関わりのない私が何か役に立てるのかなと、かなり不安に思ったのですが、それを上回るワクワク感と言いますか、やってみたい・挑戦してみたい、これを機にスポーツやオリンピック・パラリンピックに興味を持つ人間になりたいと思ったので、ワーキンググループへの参加を決めました。

 

――実際にワーキンググループに参加するにあたり、招致スローガンのアイデア、言葉の表現などで一番心がけたことは何だったのでしょうか?

 

鎌田 私はスローガンを考えるにあたって一番大事にしていたことは、私みたいなオリンピック・パラリンピックへの関心が薄い方にどう刺さるか。これを考えていました。やはり関心のある方は北海道・札幌2030大会に賛成・反対どちらにしてもニュースなどで情報を得ていると思うのですけど、私の友だちや周りでも関心のない人からは日常生活の中で「札幌に招致するよね」という話は1回も出たことがなかったです。だから、私自身もそうだったんですけど(笑)、そういう人って多いなってすごく感じていたので、その層に刺さるスローガンを一つ作ることができれば、より関心を持つ人も増えて、大会全体をみんなで盛り上げていくようなことができればすごく素敵なことだなと、そういうことに意識して取り組みました。

 

毛利 ワーキンググループ内で僕はそれこそどういう人たちにスローガンを届けたいかということを考えなければいけなかったと思うのですが、スローガンを作成するにあたってそれなりのスキルとか必要になってくるわけですよね。そこが自分はまだ経験が浅いですし、ましてスローガンを考えることはほぼ初めてのことで、では何を求められているのかなと考えた時に、若者らしい、ちょっとありえないアイデアとか(笑)、有り余るほどのパワーとか元気さとか、そこなんだろうなと感じていました。なので、北海道・札幌の皆さんに向けてこういうスローガンを作りたいですという思いというよりは、もっと自分自身が「こういうアイデアがいいんじゃないでしょうか」とか、いったん誰に届けるかは置いておいて、自分が思うようなアイデアを率直に伝えるように心がけていました。

 

 

■スポーツに限らず北海道・札幌の良いところが伝われば

 

写真:フォート・キシモト/JOC


――なるほど。そうしたお二人の思いがよく表現された招致スローガンだと思います。札幌市や全国の皆さんからの支持も一番多かった『世界が驚く、冬にしよう。』というスローガンにはどのような印象、感想を持っていますか? 策定に携わった人として、ここがポイントですというようなことがありましたら教えてください。

 

鎌田 そうですね、すごく強気な感じが出ていて「驚かせるんだ、世界を!」みたいな(笑)。たぶん、それってスポーツでもそうだと思いますし、私的には北海道・札幌の良いところってたくさんあると思っているんです。私は食べることが好きなので北海道の食べ物とか、観光、伝統とか本当に素敵な地域だと思っているので、そういったことも世界に発信できるようにという思いが込められたのではないかなと思います。毛利さん、どうでしょうか?(笑)

 

毛利 はい(笑)。僕もスローガンのフレーズで言えば、「驚く」という言葉がもう大好きなんですよね。「驚く」とか「楽しませる」とか「笑わせる」とかすごく好きなので、そういう自分の好きなワードが入ったことが嬉しかったですね。まあ、自分がこのアイデアを出したわけではないのですか(笑)、「驚く」という言葉が入ったのは良かったと思いますし、「驚かせてやろう!」という気持ちになりました。

 

――この招致スローガンに関して、皆さんの周りやお友だちの反応、反響はいかがですか?

 

鎌田 招致スローガンと一緒にニュースとかメディアに私も出ていたので、「あれ、出てた?」みたいな反響があって、そこから「札幌にオリンピック・パラリンピックを招致するんだね」という反応がありましたね。それすらも知らない人からLINEが来たりしたので、それこそ私が一つ大事にしていた「関心のない人に届ける」という意味では大成功だったと思いますし、嬉しかったです。

 

毛利 今までも変なことばかりやってきた僕ですけど、鎌田さんと同じようにみんなニュースとかを見て、「お前、何してんだ?」みたいな、最も不審がられた出来事になっちゃいましたね(笑)。でも、僕の周りはみんなスポーツをやっていますし、その中でもオリンピック・パラリンピックに関連することですから「お前、すごいじゃん」みたいな雰囲気になったので、そこはちょっと嬉しかったなと思います。

 

――皆さんの身近なところにも招致スローガンの影響が起きていると思いますし、それが今後どんどん大きくなっていってほしいですね。では、ワーキンググループでの活動を終えた今、お二人の中でオリンピック・パラリンピックや札幌のまちづくりに対する気持ちの変化、新たな学び・気づきなどはありますでしょうか?

 

毛利 そうですね。やはり大会招致に関しては気になるようになりましたよね。バンクーバーが撤退する・しないという話とか、やはり自分が関わったからこそ気になっているなと思います。あとは、どういう形かは置いておいて、本気でもうちょっとオリンピック・パラリンピックに関わりたいなという気持ちが出ていますね。

 

鎌田 私もそうですね、ワーキンググループに参加する前はオリンピック・パラリンピックにあまり関心がなかったのですが、この活動を終えてオリンピック・パラリンピック関連のニュースなどを見る機会も多くなりました。やはり自分が生まれ育ったこの地域でオリンピック・パラリンピックが開催されることはすごく素敵なことだと思うので、ぜひそれは実現してほしいなという思いが強くなったというよりは、そういう思いがワーキンググループへの参加をきっかけに生まれました。そして、ワーキンググループの活動をしていく中でその思いが強くなっていきましたね。

 

――そうした気持ちの変化と合わせて、もし北海道・札幌2030大会の開催が決まったら、オリンピック・パラリンピックを通じてどのようなまちづくりを実現していきたいですか?

 

鎌田 やはり北海道・札幌というのは美味しい食べ物、雄大な自然、観光地、伝統、文化など、スポーツに限らずたくさんの良いところがありますので、2030年はもっとより多くの人に北海道の良さが伝わってくれたらと思います。それこそオリンピック・パラリンピックを機に北海道・札幌に興味関心を持ってもらう人が増えてほしいですし、北海道には人口減少、地域振興などたくさんの課題があると思うので、一つずつ解決に向けてどんどん進化、進歩、改善していければいいなと思います。また、それに向けて私自身も何かできることがあれば、これから活動していきたいなと思っています。

 

毛利 2030年の大会開催が決まる・決まらないに関わらず、オリンピック・パラリンピックに関わる何かをやってみたいと先ほども言いましたが、実は最近、起業をしたんです。その事業内容がイベント企画など今までやってきたことをそのまま続けていくような感じなのですが、2030年までには自分のこのオリジナルの感性とセンスをオリンピック・パラリンピックのような大きい舞台にアジャストしていけるようなイベントだったり、プロモーションや機運醸成みたいなところをやれたら嬉しいなぁ……みたいなところはあります(笑)