写真:フォート・キシモト


フリースタイルスキーのモーグルで1998年長野冬季大会から2014年ソチ冬季大会まで5大会連続でオリンピックに出場した上村愛子さんにインタビュー。自国開催だった1998年長野オリンピックの思い出、オリンピック・パラリンピックの自国開催の意義や効果、そして北海道・札幌2030冬季大会の招致に期待していることなどについてお聞きしました。


長野大会は応援の声が直接届いた一番の大会


――本日はよろしくお願いいたします。上村さんと言えば、やはり1998年の長野大会がセンセーショナルでした。


ありがとうございます(笑)


――その長野大会を経験して、自国開催の良さや意義などについて上村さんご自身が思っていることを教えていただけますか?


オリンピックの期間中は基本的に選手村と競技が実施されるコースの行き来のみになってしまうのですが、それでも、街中の人たちの応援の声が伝わってきましたし、テレビを見ても日本選手をすごく応援してくださる姿・声というものが本当に四六時中感じることができました。私はオリンピックに5大会チャレンジさせていただきましたが、今思い返してみると、本当に長野大会が選手の気持ちとしてはすごく幸せでしたね。もちろん、プレッシャーもすごくあったのですが、皆さんの思いが直接届いた一番のオリンピックだったと思っています。


――長野大会で初めてオリンピックという舞台を経験した中で、それまでの国際大会とはここが違う、あるいはこれがオリンピックならではと感じた部分はどういったところでしょうか?


ワールドカップや国内の大会と比べるとやはり、自分たちの競技を見てくださる目の数が圧倒的に違うので、自分たちみたいなアマチュアスポーツの選手はオリンピックが一番の舞台です。ワールドカップで優勝を積み重ねていくこともすごく大きな目標ではあるのですが、やはり4年に1度のオリンピックは選手が一生懸命取り組んでいるものを実際に見ていただける大きなチャンスですし、そこで成績を残して、皆さんに恩返ししたいという気持ちがすごく強かったですね。ワールドカップとオリンピックは戦う相手も一緒で、優勝したいという気持ちも一緒なんですけど、意味合いとしてはすごく違ったかなと思っています。


本当に皆さんに喜んでもらえる大会が開催できたら


――日本ではその長野大会以来となる冬季オリンピック・パラリンピックの開催を目指している北海道・札幌2030大会についてはどのような思いを持っていますか?


長野大会からもう20年以上経ちますよね。私は当時18歳だったのですごく良い思い出しかないのですが、その間に時代がすごく変わっていたり、オリンピック・パラリンピックを開催した後のニュースなどを見ていると、様々な意見があるとも思いました。


それでも、冬季オリンピック・パラリンピックの話で言えば、北海道・札幌は人工雪ではなくちゃんと雪が降る地域でもありますし、気温も下がって氷もしっかり作れて、その地域の自然環境を使いながらきちんと冬季オリンピック・パラリンピックが開催できる場所だと思います。最近の大会では人工の雪を使ったり、別の場所から雪を運ばないと大会が開催できない会場も何度もありましたが、日本だったら長野県から北の地域であれば天然の雪が降りますので、そうした天然の雪資源という面を考えても日本で冬季オリンピック・パラリンピックを開催するというのは理にかなっているのではないかなと思います。


オリンピック・パラリンピックは、もちろん“見せるところ”はものすごく素敵に見せてもらいたいのですが、開催した時に本当に皆さんに喜んでもらえる大会が開催できたら、それはまたすごく大きなレガシーになるのかなと思います。ですので、もし札幌にそうしたチャンスがあるのであれば、世界中の皆さんに「こういうオリンピック・パラリンピックの開催の仕方っていいね」と言ってもらえるような大会になったら嬉しいなと思います。


写真:フォート・キシモト 


――それでは最後に、上村さんが思い描く北海道・札幌2030大会への期待をお聞かせください。


オリンピック・パラリンピックは世界一を目指している選手の皆さんの、4年に1回のものすごいパフォーマンスを見ることができる大会です。ですので、私はアスリートの皆さんの大会にかけるパフォーマンスや思いを見て、もうとにかく感動したいなぁと思っています。




上村愛子(うえむら・あいこ)

フリースタイルスキーのモーグルで1998年長野冬季大会、2002年ソルトレークシティ冬季大会、2006年トリノ冬季大会、2010年バンクーバー冬季大会、2014年ソチ冬季大会と5大会連続でオリンピックに出場。