2022年北京冬季オリンピックにスピードスケート男子500mで出場し、見事に銅メダルを獲得した森重航選手。TEAM JAPANネクストシンボルアスリートにも認定され、今後いっそうスピードスケート界のエースとして期待がかかる森重選手に北京オリンピックでの思い出、地元・北海道での開催を目指す札幌2030大会への思い、目標などをお伺いしました。


閉会式で感じたオリンピックの価値


――森重選手は今年2月に開催された北京冬季オリンピックのスピードスケート男子500mで銅メダルを獲得するなど活躍されました。オリンピックに出場して思い出に残っていること、これがオリンピックだと感じた出来事などがあれば教えてください。


閉会式が一番印象的でした。本当は開会式にも出たかったのですけど、競技スケジュールの関係で出られなかった中での閉会式でした。本当に北京の街全体が盛り上がるような演出と構成でしたし、入場の時も国や地域関係なく選手みんなが閉会式を楽しむということを体験できて、それだけでもオリンピックに出場して価値のあることだったと思っています。


――想像していたオリンピックと実際に経験したオリンピック、ここが違っていたという部分はありましたか?


4年に1度の大会ですので、そこにかける思いというものがやはり違いました。今までは見る立場だったので「この選手はすごいな」と思うだけだったのですが、実際にオリンピックに出たり身近に感じることで、それぞれの選手にオリンピックにかける思いがあって、その大きさも違うのだなと感じました。


――閉会式でいろいろな国・地域の選手と一緒にというお話でしたが、何か交流はあったのでしょうか。


新型コロナによる制限があったのであまり交流はできなかったのですが、同じスケート競技、ショートトラックやフィギュアスケートの選手たちとは少し交流できたかなと思います。


――東京2020大会に続き、北京2022大会も残念ながら無観客開催となってしまいましたが、ボランティアの方や地元の方たちとの交流についてはいかがでしょうか?


選手村にはボランティアの方たちがいらして、選手間だけでなく、ボランティアの方たちとも日本のバッヂを交換する交流がありました。



自国開催はスポーツに触れる大きな機会になる


――オリンピック・パラリンピックはそうした地元の人たちとの触れ合いも醍醐味の一つだと思います。北京でオリンピックを経験された立場から見て、もし北海道・札幌でオリンピック・パラリンピックが開催されるとしたら、森重選手はどのように思いますか?


自分は北海道出身ということもありますので、自分のことを知ってくれている人や家族に見に来てもらえるということが一番大きいと思っています。


――やはり地元の応援、声援というものは違いますか。


そうですね。最近のスピードスケート競技は無観客ではなくなってきているのですが、それでも人があまりいなくて声援も少ないので、そうした応援の声があるだけでもすごく頑張ることができますね。


――応援という意味では、森重選手も東京2020大会では見る側として選手を応援していたと思います。見る側として自国開催のオリンピック・パラリンピックを経験されたことも踏まえて、自国開催のオリンピック・パラリンピックの良さ、意義はどのようなところにあると感じていますか?


その競技、選手が普段よりも注目されやすいのかなと思っています。昨年の夏は自分もずっとテレビをつけて東京2020大会を見ていましたが、それまで全然知らなかった競技でも見るようになりました。だから、スポーツに触れやすくなるのかなと思います。


――2030年に北海道・札幌でオリンピック・パラリンピック開催となったら、同じようにこれまで以上にスピードスケートに注目が集まりそうですね。


はい。スピードスケートだけではなく、それ以外の冬季競技をやってみようという気持ちにもなるのではないかなと思っています。



帯広の森で選手が切る風を直接感じてほしい


――1972年に札幌オリンピックが開催されたことで、インフラが整備されるなど街は大きく発展しました。今回、2度目のオリンピック、初めてのパラリンピックを招致することで50年、100年先の札幌をもっと素晴らしい街にしていこうという思いも込められています。森重選手は札幌2030大会を機に札幌、北海道はどのような街になってほしいでしょうか?


スピードスケートの観点からになってしまうのですが、やはり現状はスピードスケート施設へのアクセスの悪さがあると思います。もし札幌2030大会の開催によってアクセス面などの環境が整備されれば、海外から選手が来やすくなり、ワールドカップなどの国際大会も多く開催されることになるかもしれません。スピードスケートのみの観点になってしまうのですが、札幌2030大会が開催されれば、今後スピードスケートの発展がもっとあるのではないかなと思います。


――札幌2030大会のスピードスケート会場は帯広の森屋内スピードスケート場が予定されています。この会場にまつわる思い出、またはこの会場での見どころなどがあれば教えてください。


観客席の増設などがあると思うので、本番ではどのような形になるのかはまだ分かりませんが、今の形でしたら帯広の森のリンクは選手との距離感が近いです。なので、選手を間近で見ることができるかもしれないので、そうした部分を観客の皆さんには楽しみにしてほしいなと思います。


――選手が切る風を感じることができる、という感覚ですか?


そうですね、本当に距離感が近いですし、実際に見ると選手の躍動感が他の会場とは全然違うと思います。


――ということは、観客の声も直接耳に届くということでしょうか?


はい。よく聞こえますので、応援の声はすごく力になりますね。



札幌2030大会では最高の結果を残したい


――これはぜひ、ファンの皆さんには札幌2030大会が開催されたら直接会場に応援に行っていただきたいですね。では、森重選手が感じている北海道の一番いいところ、世界にアピールしたい北海道の良さを教えてください。


ご飯がおいしいところですね(笑)。全国各地に名産はありますが、北海道は特に海鮮がおいしいですし、また大自然ですので住んでいて心地がいいですね。


――やはりご飯がおいしいのは一番ですね(笑)


はい、そう思います(笑)


――それでは最後の質問になりますが、改めて地元・北海道でのオリンピック・パラリンピック開催への期待をお聞かせいただければと思います。


札幌での開催になれば、日本全国の皆さんが冬季のスポーツに触れやすくなると思いますし、身近に感じていただけると思います。アスリートからすればその競技の発展にもつながっていくと思いますので、ぜひ開催してほしいという気持ちは強いです。


――森重選手ご自身の目標としてはどうでしょうか?


札幌2030大会で最高の結果を残して、自分を知ってくれている地元の方たちや家族にその姿を見てもらえたらなと思います。



森重 航(もりしげ・わたる)

2022年北京冬季オリンピックにスピードスケート男子500mで出場し銅メダルを獲得。

写真:フォート・キシモト