Q&A

■ 開催意義

Q. 大会を開催することでどんなメリットがあるの?

2030年に、初のパラリンピック、そして2度目のオリンピックを開催することは、2030年以降の札幌市のまちづくりにおいて重要な役割を担います。


東京2020オリンピック・パラリンピックでは、競技場やアリーナなどスポーツに関連する施設などが整備され、スポーツに関する様々な事業が実施されました。これは単に施設が整備されただけではなく、多くの人が参加し、関わる中で、多様な価値、例えば障がいのある方たちの社会参加、男女平等、性的指向・性自認などについて都民が考え、取り組む機会にもなりました。その結果、公共交通機関や施設のバリアフリー化を含む共生社会実現に向けた数々のきっかけ、7万人にものぼる方に活躍いただくことで作られたボランティア文化、みんなのメダルプロジェクトをはじめとする持続可能性や、大会への女性選手の参加割合の増加(オリンピック【48%】、パラリンピック【42%】はいずれも大会史上最高)をはじめとする多様性と調和への意識の変化などが芽生えました。また、小学生を対象としたマスコット選定では、全国の子供たちがそれぞれの意見を出し合いながら一つの意見にまとめ、投票するという画期的なプロジェクトが実施されました。


北海道・札幌2030大会においても、無駄のない効率的な計画のもとで整備されるスポーツ関連施設や様々な事業により、大会後にはトップアスリートだけでなく、市民の皆さまに気軽にスポーツを楽しんでいただける環境が整うことが期待されます。それだけでなく、大会をきっかけとして、バリアフリー化の推進で誰もがくらしやすい共生社会への一歩になること、民間投資によるまちの再開発促進、まちの利便性向上、天然の雪をはじめとする豊富な観光資源を国内外の観光客にアピールし呼び込むこと、SDGsの目標年である2030年に大会を開催することで持続可能な社会の在り方を北海道・札幌から発信することなど、様々な価値を生み出すことが期待できます。


何より、アスリートたちが国籍、人種、肌の色、言語、性的指向など、あらゆる違いを超えてひとつの舞台で競い合い、試合の後には互いを尊敬し友情を育む姿を目の当たりにすることは、将来の北海道・札幌を担う次世代の子どもたちに、これからの社会を支えるうえで、重要な気づきやきっかけとなり得ます。


こうした価値が、札幌のみならず、北海道、そして全国に広がることを1人でも多くの方に実感いただけますよう、自国で開催することの価値を丁寧に伝えてまいります。




Q. オリンピック・パラリンピックを開催しなくても、バリアフリー化などの街づくりは進むのではないか?

すべての人たちが生き生きと活躍する社会において、外出しやすい環境整備は欠かせません。バリアフリーやユニバーサルデザインは障がいをお持ちの方だけでなく、妊婦や子供連れの方、高齢者など、あらゆる方にとって住みやすい社会参加につながるものです。


世界中から多くの方をお迎えするオリンピック・パラリンピックでは、自分たちが住む街について改めて考える機会にもなります。そして様々な施策を通じて、多くの分野でバリアフリー化が進むことが期待されます。


札幌市では、これまでも施設や設備などのハード面と、技術・人材・情報などのソフト面との両方からバリアフリー化を進めており、今後もオリンピック・パラリンピックの開催に関わらず取り組みを推進していきます。一方、オリンピック・パラリンピックは、市民、企業、行政など多くの力を集め、人種や性別、国籍の垣根を超えた人々の思いを一つに束ねることのできる世界最大級のイベントでもありますので、民間からの積極的な投資や、くらしやすい社会の実現に向けた新たなサービスの開発、またパラリンピックを通じて障がいへの理解が進むなど、より一層バリアフリーの取り組みを加速させる効果があると考えています。


東京2020大会では、道路や鉄道・バスなどの交通インフラだけでなく、ホテルや商業施設など、あらゆる分野でバリアフリーが大きく進展し、それと合わせて、パラリンピックを身近に感じることで障がいをお持ちの方や高齢者の方などあらゆる方々に対する「心のバリアフリー」の推進にもつながりました。


また、ハード面の整備だけでなく、東京都ではオリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念がより広く都民の方たちに行きわたる都市となることを目的として、平成30年10月に制定された「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例」に基づき、「東京都性自認及び性的指向に関する基本計画」が策定されるなど、制度面でも整備が進みました。バリアフリーに限らず、多くの方にとって多様性について理解を深めていただく機会にもつながったのではないでしょうか。


北海道・札幌オリンピック・パラリンピックでも同様に、大会準備を通じてバリアフリー化を大きく推進していきたいと考えています。



■ 財政

Q. 多額の費用はオリンピック・パラリンピックではなく、他の施策にまわした方が良いのでは?すべて市の財政でまかなうの?一部報道では、開催に3000億円とも報じられているけど、そんなにかかるのか?


北海道・札幌2030大会計画の最大の特徴は、既存施設を最大限活用し、持続可能な方法でオリンピック・パラリンピックを開催することです。費用について、報道などを通じ大会開催により、多くの市民負担が増えるように受け止める方もいらっしゃると思いますが、実態とは異なりますので、詳しくご説明いたします。


開催費用の大部分は、公費ではなく、2030年大会が開催されることで得られる収入でまかなわれる予定です。この中には、IOCから得られる負担金、スポンサー収入、チケット収入、ライセンスグッズ販売収入などが含まれ、約2200~2400億円を見込んでいます。これは大会開催のために提供いただく資金でありますので、仮に大会が開催されなかったとしても、この資金を市の他の施策に回すことはできません。


一方、大会をきっかけとして整備される施設の費用には、公費が投じられます。ただし、これは既に使用されている施設を大会後も何十年にわたって市民の皆さまにご活用していただくために更新・改修のみ行うもので、オリンピック・パラリンピックの開催を目的に新たに建設する施設はありません。例えば、アイスホッケー会場としての利用を予定している新月寒体育館は、年間約12~14万人と多くの市民の皆さまに利用されている現月寒体育館の老朽化に伴う建て替え施設でありますので、オリンピック・パラリンピックが開催される・されないにかかわらず整備が必要なものです。施設整備費は、全体で約770億円と見込んでおりますが、現行制度に基づいて国の交付金等を活用していくことを想定しておりますので、札幌市の実質負担は約490億円と試算しています。


このように既存施設を最大限活用して公費負担を最小化する一方、老朽化が進む施設については、オリンピック・パラリンピックをきっかけにバリアフリー対応なども含め、末永く活用できる施設に改修していく計画です。このことにつきましても、公費に見合う将来への投資として多くの皆さまにご理解いただけますよう、引き続き丁寧な説明に努めてまいります。



Q. オリンピック・パラリンピックを開催して、市の財政は大丈夫なの?

札幌市の一般会計は、新型コロナウイルス感染症の流行以前の令和元年度は9,923億円、コロナ禍となった令和2年度は1兆2,738億円となっています(いずれも歳出決算)。このうち、毎年約1000億円は公共事業にコンスタントに投じられています。一方で、オリンピック・パラリンピックをきっかけとした施設整備に見込まれている費用は、大会開催までの7年間で約450億円(※)と試算しております。これは、市の財政に過度な負担を与えるものではないと考えております



Q. 東京2020大会では招致時と開催時で予算が大きく変わった。北海道・札幌2030大会でも同様のことが起こるのでは?

国際オリンピック委員会(IOC)が2014年に採択したオリンピック・アジェンダ2020(IOCの中長期戦略)により、それ以前の東京2020大会招致時とは招致プロセスも大きく変わり、予算の算出方法も変更となっています。北海道・札幌2030大会の予算は、東京2020大会招致時の立候補ファイルの予算ではなく、組織委員会設立後の予算を参考に試算しておりますので、招致時と開催時で予算が大きく変わることはないと見込んでおります。



Q. 北海道・札幌2030オリンピック・パラリンピックを開催すると、どの程度の経済効果があるの?

施設整備費及び大会運営費を用いて大会を実施した場合、直接的効果(招致決定から大会開催までの期間における経済波及効果)だけで約7,500億円、札幌市内分は約3,500億円の経済波及効果※1が見込まれています。これとは別に、大会の影響による冬季の観光客の継続的な増加など、間接的効果としてさらなる経済効果(レガシー効果)も見込まれます。

※1:令和3年度の試算



■ 競技会場・大会運営

Q. オリンピック・パラリンピックで新たな施設を建設することは将来的な市の負担になるのでは?大会後はどのように使われるの?

北海道・札幌2030大会計画の最大の特徴は、既存施設を最大限活用し、持続可能な方法でオリンピック・パラリンピックを開催することです。施設整備については、既に使用されている施設を今後も何十年にわたって活用していくために更新・改修のみ行うもので、オリンピック・パラリンピックの開催を目的に新たに建設する施設はありません。


例えば、アイスホッケー会場としての利用を予定している新月寒体育館は、老朽化が進んでいる現月寒体育館の建て替え施設でありますので、オリンピック・パラリンピックが開催される・されないにかかわらず整備が必要なものです。


この新月寒体育館には、メイン・サブ2つのアリーナを備える予定であり、大会後のメインアリーナは、スポーツの他、コンサートなど、年間を通じて多目的な利用を見込んでいます。また、サブアリーナは、アイスリンクとなり、ジュニアの育成や、市民の皆さまが気軽にスケートやアイスホッケーなどを楽しんでいただけるリンクとして通年利用を見込んでいます。なお、現月寒体育館については、2030年大会でカーリング会場として活用した後に取り壊す予定です。


また、大倉山ジャンプ競技場は、2030年大会をきっかけに、既存のラージヒルに新たにノーマルヒルを併設するデュアル化(二つのジャンプ台を一つの場所に集約することで、将来の運用コストを抑えて効率的に活用する方法)を計画しております。これにより宮の森ジャンプ競技場(ノーマルヒル)は競技会場としての役割を終えることになりますが、2カ所のジャンプ競技場をそれぞれ整備・改修して両方とも維持し続けるより、大倉山をデュアル化する方が中長期的に公費負担を抑えられるメリットがあります。なお、宮の森ジャンプ競技場は、1972年大会のレガシーとして、今後の活用について検討していきます。


その他、選手村については、更新時期を迎える市営住宅月寒団地の建て替え事業で整備する住棟の一部を、大会期間中に活用することとしています。そして、大会後に市営住宅として市民の皆さまにご利用いただけるように計画しております。


これらの施設整備費は、全体で約800億円を見込んでおります。現行制度に基づいて、国の交付金等を活用していくことを想定しておりますので、札幌市の実質負担は約450億円と試算しています。



Q. 大会時の大雪対策は大丈夫なの?

札幌市では、令和3年度の冬に想定を大きく超える大雪に見舞われ、公共交通機関の運休や市内各所で渋滞が発生するなど、市民生活に大きな影響が及びました。このようなことにならないよう、当時の状況を検証したうえで、北海道開発局等の関係機関や関係団体等との協議を重ね、「排雪作業の早期対応や強化」、「雪堆積場等の増強」など大雪時の対策※2を取りまとめたところであります。大会期間中に大雪となっても、これらの対策を進め、不便を感じることがないよう、市民の皆さまの日常生活の確保に努めてまいります。


※2「令和3年度の大雪対応に係る検証と今後の対策」について

  https://www.city.sapporo.jp/kensetsu/yuki/r4_ooyukitaou.html


また、大雪に限らず、大会運営に影響を及ぼす様々な出来事・現象については、大会までの準備期間においてそれぞれのリスクを分析・評価し、影響の大きさや発生可能性などから、重点的に取り組むべき課題を整理し、個別に対応計画を練った上で、大会本番を迎えます。


大会における大雪時の対応については、過去の冬季オリンピック・パラリンピック運営でも数々の事例がありますので、国際オリンピック委員会(IOC)・国際パラリンピック委員会(IPC)から知見を得ながら準備を進めます。また、大会時には、アスリートをはじめ、選手団関係者、大会運営関係者、放送関係者、プレス、観客などが専用バス・車両で移動することもありますが、市民の皆さまの日常生活と円滑な大会運営の両立に向け、関係機関と調整しながら対応を検討していきます。



■ SDGs

Q. オリンピック・パラリンピック開催とSDGs、どう関係があるの?開催することで環境負荷・開発による環境破壊が増えるのでは?

2030年はSDGsの目標年であること、そして、2030年以降の大会は「クライメートポジティブ」=温室効果ガスの削減量が排出量を上回る大会を求められていることから、この年に開催される冬季オリンピック・パラリンピックは持続可能な社会の在り方を日本から世界に発信するという、非常に重要な機会となります。

昨年開催された東京2020大会においても、持続可能性は重要なテーマの1つとなり、持続可能な社会の実現に向け、様々な主体と連携し、課題解決のモデルとなる取り組みを推進していました。


例えば、大会期間中の再生可能エネルギー電力100%の実現や、燃料電池自動車475台の導入、聖火台燃料に水素を使用するなど、二酸化炭素の排出量より削減量が上回るカーボンマイナス大会を実現。調達物品の99%をリデュース・リユース・リサイクルする3Rの推進。都市鉱山からメダルを製作し、使用済みプラスチックから表彰台を製作するなど、参加型プロジェクトを通じた市民参加の創出。施設整備においては木材使用や、雨水等の循環利用・在来種による植樹など、自然環境への配慮。ジェンダー平等と多様性と調和の推進、などです。


札幌市でも「2050年には札幌市内から排出される温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることを目指す」ゼロカーボンシティ宣言を2020年に表明しました。これだけにとどまらず、東京2020大会での事例も参考にしながら、北海道・札幌2030オリンピック・パラリンピックをきっかけとして、SDGs目標年のオリンピック・パラリンピックにふさわしい数多くの取り組みを推進し、社会のポジティブな変化に貢献していくことを目指しています。



■ 招致活動


Q. 招致自体にも多額の費用がかかるのではないか?

2014年に採択されたオリンピック・アジェンダ2020(IOCの中長期戦略)により、オリンピック・パラリンピックの開催の在り方は大きく転換し、経費をできるだけ抑えた招致活動を行うことが示されています。


合わせて招致のプロセスについても大きく見直されました。これまでは複数の候補都市が多額の費用をかけてプロモーション活動を行い、IOC総会の投票で決定する方法でしたが、現在は、IOCの専門委員会(将来開催地委員会)が開催に興味を示す都市と直接対話し、開催能力が認められる都市を推薦して、IOC理事会、及び、最終的にIOC総会で決定される決議方式に変更されています。

この変更により候補都市は、開催計画について常にIOCの専門家の知見を得ることができるようになり、また、従来のような多額のプロモーション費用を投じる必要が無くなったことから、招致を行う都市の負担はかなり小さくなりました。


なお、北海道・札幌2030大会招致に関しては、更に招致にかかる費用を削減するため、従来の独立した招致委員会を設立せず、札幌市及びJOCが多彩な外部有識者から構成する北海道・札幌2030オリンピック・パラリンピックプロモーション委員会を設置しました。

プロモーション委員会では、大会の開催意義や価値について議論するとともに、国内の機運醸成と国民の皆さまにご理解いただくことを目的に活動し、世界に向けた発信についても議論をしていきます。